よひらひらひら

自分だけの句を日記代わりに。

大年

花屋は迎春準備用の小さな門松を並べ、客を待っている。


大年。大晦日。大つごもり。 「つごもり」は「月隠」の略で月がもっとも隠れる日。
まさに今日である。
静かな大晦日であった。
お天気は良く、風も無く、掃除をしても、洗濯をしてもなんと良い日和であったことか。


「日本歳時記」から
   ☆    大年の廃品出るわ出るわ出るわ    石塚友二


> 年末の廃品が後から後から出ることへの感嘆。


しかし、俳人とは因果な人種だことよ。
こんな廃品を出して大掃除の事を、、、それを俳句に詠む。
歳時記に載る。選んで載せる選句者がいる。
まあ、他の例句より解りやすいが。


「日本歳時記」から
   ☆    大晦日定めなき世の定めかな    西鶴


> 無常の世の世間の決まりを思い知らされた大晦日。
「世間胸算用」で大晦日の町人生活の悲喜こもごもを描いた西鶴ならではの作。
後世に名を残す人の句の違いかな?


    
    💌    大年やこれから幾度あることか
            ( オソマツな我が句 )


    💌    灯油売隣へ来てをる大晦日


今年も節料理はホテルの注文の品。
恙なく年が越せてよかった。






枯蔦

高速道路の壁面を覆っている枯蔦。


  ☆    枯蔦や石の館の夜の雨    松根東洋城


枯蔦 蔦枯る   淋しい季語だ。
この壁面の蔦がこんなに視覚的に美しいとは写真を見るまで気がつかなかった。


この高速道路の壁面に沿った階段を登ると、それこそ全国どこへでも車で行ける。
自由の象徴のような 道 が西に東に伸びている。



   💌    枯蔦や人形の家ちう名の茶房


「人形の家」と云う喫茶店がある。
この喫茶店は実に蔦が見事で、小さな窓を残してたてもの全体を覆い尽くしている。
この喫茶店の前を通る度、イプセンの「人形の家」の小説を思いだす。
自由になりたい主人公 「ノラ」 をがんじがらめにしているのはこのような 蔦 ではないのかしら、、、と。


   💌    烏骨鶏飼ふ丘の家蔦枯るる


   💌    蔦枯るるテニスコートのがらんどう





室の花

室咲 
春に咲く花を温室で促成栽培をして咲かせたもの。
一番多いのが シクラメン。よくみかけるのが フリージャー スイトピー等々。
広い意味で 蘭の花も、、、


    ☆    厨房に母のためなる室の花   上田日差子


> 家族のために働く母への感謝を込めて。何の花でしょうね。


     
    💌    戸の開くたび葉の揺るる室の花


    💌    室の花病棟の廊に並びある


    💌    室の花老ひたる猫のよくせきて


    💌    室の花さりげなく置く募金箱


             💌    室咲やささめごと聞く昨夜の寝屋    


季語としては易しいと思う。
あたたかい心、ほんわかとした思いを詠めばいいような。


    ☆   室咲に問ふ何が真何が嘘    中島秀子


> こんな心象俳句もいいな。


寒木瓜

木瓜の花は年中咲いている。
本当は春の花であるけれど、季節を問わず咲くから、ほほけている、すなわち呆けている花、木瓜と名前が付いたと聞いている。
我が家の庭にも年がら年中、木瓜の花は咲いている。
好きな色は、薄い桃色の木瓜。莟の時は真白く底が薄緑に咲く木瓜が木瓜の中でもことに好きだ。
今咲いているのは 冬木瓜 又は 寒木瓜。
枝が重そうに咲き満つ木瓜もよいが、まばらに一輪二輪と咲く冬の木瓜も良い。


     ☆    寒木瓜や日のあるうちは雀来て    永作火童


> 日向で遊んでいた雀がもういない


我が家の庭には雀が毎日5~6羽 来ていたのに野良猫が来てな子に喧嘩を売るという狼藉を働いてから、とんと来なくなった。
な子がベランダで寝っころがっていても近くまで寄って来ていた雀だ。よほど恐い目にあったのだろう。


    💌    告解室静かに出でく冬の木瓜


    💌    寒の木瓜鎧のやうに棘ありぬ

冬夕焼

               🐇    瘤萎へし駱駝に冬の夕焼けて    葉七子
    
    💌    病む兄を見舞ふて帰る冬夕焼


懐かしい風景。
大河の向うの山の風景。
夕方になるとポツポツと、この集落に点る灯が見える。
一点の灯。何も関係ない向うの岸の山里であるけれど、私を育んだ原風景の一つ。
両親がいて、吉野川の流れが夜更けには聞こえ、この山の裾に架った鉄橋を通る汽車の灯が見える。
そんな、子供の頃の景色がまざまざと浮かんできた。


見舞った兄はこの山が良く見える、隣町の老人の病院に入院をしていた。
不自由になった身体に話しかけると、私とわかって涙を流す。


美しい夕焼けもある。
待つ家族のいる元に帰る時の夕焼けは明日のお天気を約束して、屈託のない子供の頃と同じであるが、風が冷たい冬の夕焼けはことに淋しい。


しりとり俳句 から。


     🍒    大玻璃の向ふは湖よ雪しまく


     🍒    寒柝の近づひて来る仕舞風呂


     🍒    冬凪やあまたヨットの瀬戸の海


     🍒    とけさうな嬰児の笑顔室の花


     🍒    数え日や返してをかねばならぬ本


     🍒    壱円玉声出し数へ年の市


     🍒    冬日濃し峰に送電搭の影


月並の域から出ていない句。
感性は枯渇していて学んでも学んでも、言葉が見つからない、忘れている。