よひらひらひら

自分だけの句を日記代わりに。

枯銀杏


「名の木枯る」と云う季語がある。
一目でわかる特徴のある木の名前は「名の木枯る」の中でも上に木の名前をつけて、「欅枯る」「銀杏枯る」「枯柳」と季語としている。
白峰寺から 崇徳御陵へつづく径に、この枯れた銀杏の大樹があった。


     ☆    銀杏枯れ星座は鎖曳きにけり    大峰あきら


>「日本の歳時記」より
 夜でも樹形の明らかな枯銀杏。星座がくっきりと現れ、それらがつながって見えてくる。華やかな冬の夜空である。


崇徳上皇の雲居御所での生活は語って、伝えて余りあるものがある。
迷信や伝説を思い浮かべながらこの径を歩くと、暗い気持ちになってくる。
相当な樹齢の銀杏であるから、上皇さまも、西行法師も見た?と銀杏の生きた年数をつまびらかにしてしまうより、ロマンがあってよいようだ。
白峰の山頂の雲居御所の辺だから、上に銀杏大樹を覆うものや、遮るものは無い。
雲のみが、梢を渡ってゆく。空に向かっている枯銀杏である。


     💌    枯銀杏大きな雲の近づきぬ

冬菜


    ☆    厨事そこそこ畠の冬菜見に    杉田久女


冬に収穫される葉野菜の総称。
冬の畑で青青々とした葉が育っているのを目にすると、なぜか人々の温かい暮らしが浮かぶ。


> 広い畑とも思われないが、早々に朝の水仕を終えた久女さんが、前掛けで手を拭きながらいそいそと、下駄をつっかけて行く姿が思われる。
幸せの絶頂にあった頃の久女さんかもな。


    💌    鎌で根を切って冬菜を採りくれぬ


お隣のご主人は散歩をしている私を見かけると、いつも持って帰れと冬菜を採ってくださる。
鎌で根元を切る。キュキュと葉が摺れる瑞々しい音がする。
白菜、葱は独立した冬の季語になっているので、冬菜とは云わない。
キャベツは夏の季語になっている。


    💌    郵便夫冬菜の畑で立ち話


    💌    冬菜畑昨夜の雨粒光をり

狐火

                                                                                         (   根来寺鐘楼)


   ☆    向かひ来ることあらざりし狐火は    茨木和生


> 「日本の歳時記」より
 そのとおりだなと思ってしまう、幻想的な句。


山野や墓地に青白い炎がちらつく現象を、古人は狐が口から吐く火だと見た。
原因は人骨や獣の骨の燐が放つ微光だと言われるが、狐火と見るから詩が生まれた。
私などは、子供の頃、墓地に近ずくな、狐火がこわいぞ お年寄りに脅された記憶がある。


しりとり俳句で 狐火 を何人かと繋いだ。
しりとり俳句 、、、最近は不調である。


    🍒    狐火や一句賜りたく候     (狐火)


    🍒    鳴門までひとっ走りや小春凪   (る のしりを取る)
    
    🍒    福引や一等賞の小さき箱    (引)


    🍒    かじけ猫ルンバに追れをりにけり    (猫)


    🍒    明け方の夢や豪華な避寒船    (夢)


              🍒    雪連れて北の国から大統領    (雪)


               🍒    いけずねえでも別れられない寒の紅    (い をしり取る)

冬凪

                         (垂水の岬)


高松市から坂出へ行く通称、大越街道に 川島猛美術館 がある。
そこの六階の窓から海を見る。
垂水町の小さい岬だと思う。
瀬戸大橋の見える反対側をカメラで覗いていて、こんな景を捉えた。
海の中に鳥居がある。
崖の下。今は満潮で沈んでいるようであるが、潮が引いたとしても、歩いて行ける場所ではないようである。
鳥居は何時、どなたがと考える。
推して知るべし、漁師さん達の信仰のものであろう。
それ以上の謂われとか、色々と里の人に聞けば判明をすると思うけれど、いつもドライブをしていて気がつかなかった物を見つけた驚きが先にたち楽しくもあった。


    ☆   冬凪げる瀬戸の比売宮ふしをがみ    杉田久女


冬凪とは、冬の波の穏やかな状態をいう。
小春のように、釣りや浜辺で遊ぶこともできる。
しかし冬の海は何時、荒れる海になるかも、その間に賜る一時のおだやかな海はうれしいことだ。
> 久女さんが、ひめさまをお祀りする宮で敬虔なお祈りを奉げた一句。
不幸な晩年だった久女のイメージは巨怪な虚子が定着させたと私は少なからず思っている。


    💌    冬凪や弛むだままの舫綱


    💌    冬凪や真珠のやうなブイの玉


             💌    冬凪げる睦んでをりぬ魚や貝

かじけ猫

寒いこの時期に丸くかたまってかじかんでいる猫のこと。
な子、ストーブの前の箱の中でまさにかじけ猫の状態。
目が覚めると、まだ蒲団の中でまどろんでいる私を起こしにくる。
階段を後ろを見ながら、私がついて降りるのを確かめながらリビングへ行く。
石油ストーブの前に陣どって、ストーブを点けろとうながす。
エアコンにスイッチを入れて、次にストーブに点火をする。
我が家は夏はエアコンのお世話にならずとも涼しいが、反対に冬は温度が2~3度低い。
冬はエアコンとストーブの両方に世話になる。
な子は、ストーブの前が特等席と承知している。賢い。


かじけ猫は冬の季語。
他にかまど猫、炬燵猫。
竃は昨今、家庭から姿を消したから、余り見ることはなくなった。
   
      ☆   何もかも知ってをるなり竃猫    富安風生


> じーとすくんでいる猫こそ、家庭の内でおこっている様々な喜び哀しみを身にしみながら感じとっているにちがいない。猫だとあなどるな。
そんな猫の声が聞こえそうな句である。



   🐢    炬燵守る漬物の石のやうな猫   葉七子
                    
> な子を詠んだ句。
どでんとかまえて真ん丸いな子はまるで漬物石のようであった。
炬燵の中には入らずに蒲団の隅で構えて一日中うつらうつらとしていた。


この立派なモデル猫が傍にいながらさっぱり猫の句が詠めない。